21ともいき校訓「自律・共生」には、自らを律して、自身の目標に向かって計画的に努力を重ね、他者とのかかわりの中で目標を達成できるような人間になってほしい、という願いが込められています。教育方針「学び合い・助け合い・高め合いの実践」のもと、自ら学ぶ力、共に生きぬく力を育てます。東洋高等学校 校長 石井 和彦校 訓教育方針(学・助・高・実)自律・共生(共生精神)学び合い・助け合い・高め合いの実践「自律」した「学び」を身につけよう 2024年の3月末のある日、卒業生のUさんが校長室を訪問してくれました。大学を卒業し、就職も決まって実家に戻ったタイミングで母校を訪れたということでした。 Uさんとは2年次のオーストラリア・ターム留学がきっかけで話をするようになりました。Uさんについてもっとも印象的だったのは、宇宙飛行士になりたいという夢をもっていたことです。残念ながら、規定の身長に足りないためその夢をあきらめざるをえませんでした。一方でターム留学をきっかけに海外大学への進学も検討していましたが、結果的には広島大学へ進学し「情報」を扱う学部で勉強をして、このたび広告代理店に就職したということでした。学生生活などを聴いてみると、東京を離れて地方でひとり暮らしをしたことで豊かな生活ができた、と実感を込めて様々な話をしてくれました。大学時代にも海外留学をしたかったけれど、コロナ禍のために実現できなかったのが残念だった、とくやしそうに語っていました。だんだん話を聴いていくと、「情報」を学んでいくうちに、消費者の動向分析や出版など様々な分野に興味を持ったりして、また、宇宙飛行士についても身長規定が低く変更されたので、と未だ夢を捨てていないこともわかってきました。慣れないためにしんどかったことや辛かったこともあった大学生活でしょうが、それ以上に地方でのひとり暮らしの新鮮さや楽しさ、そして大学で学んでいくことによって知的視野がどんどん広がっていく驚きや喜びが伝わってきました。この人であれば就職が決まったからゴールだ、と捉えずに、これからも学び続けて新しいことにもチャレンジしていくのだろうな、と思いながら話を聴きました。思わず私は、今更ながら学ぶということは、そういうことなんだよね、と彼女に対して口にしかけていました。 就職のために大学に行く、とか、資格取得のために勉強する、という発想をすべて否定するつもりはありませんが、それはいずれつまらなくなってしまうだろうな、と思います。テストで良い点を取ることはむろん悪いことではありませんが、テストで良い点を取るための勉強はむなしくなっていくと考えています。 孔子が弟子のために残した『論語』に「知好楽」の一節があります(雍也篇第六)。「これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」と読むそうですが「これ」は学問を指しています。したがって、訳すと「学問を理解している者は、学問を好んでいる者に及ばない。学問を好む者は、学問を楽しむ者に及ばない」という意味になるようですが、広く考えれば「これ」は学問以外にも、仕事や趣味など様々なことにもあてはまりそうです。未知の事柄に出会った時の驚きや喜び、今まで気づかなかったことを発見したときの心躍る思い、わからなかったことがわかるようになった時の快感、これが学ぶことの動機であり結果であると、私は思っています。 東洋高等学校では、教科の学習はもちろん、行事やクラブ活動などを通して、学ぶことへの認識を深めていってもらいたいと考えています。教科の学習を「楽しむ」ようになるためにはどうしたらいいのか、とか、他人に自分の考えをわかってもらうためにどんなことが必要か、と、広い意味で学ぶことの意義を、それこそ学んでもらいたいと考えています。日本に限らず世界中が、今までにないスピードと規模で変化し、先の読めない状況だからこそ、学ぶ意義は重みを増しています。 私の理想は、東洋高等学校で過ごした皆さんが、卒業する頃には、自分自身で、何を・なんのために・どこで・どのような方法で学んだらいいか、と判断し実践できるようになることです。
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